世界でたったひとつの色

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私たちが毎日袖を通している衣服や、バッグに入れているハンカチ。そのほとんどが、化学的に合成した「合成染料」で染色されています。材料が手に入りやすく、大量生産をしやすいため安価に販売できますし、色落ちしにくい性質で、実に様々な色を表現することが可能なので、当然と言えば当然かもしれません。

 
カラフルな色が至るところに溢れている世の中ですが、昔は明るく均一な色を作ることが容易ではありませんでした。

 
「天然染料」しかなかった時代、鮮やかな色を作るには大変な手間が掛かったため、身分の高い人しか身に着けることが叶わなかったそうです。時代劇などを見ていると、庶民が身にまとっている服はくすんだ色が多いですよね。こんなところからも、当時の事情が何となく想像できるかもしれません。

 
古来より伝わる天然染料を使い、手間暇をかけて染めた布製品は派手さこそないものの、現代の私たちから見れば実に贅沢な逸品です。

そして、自然志向の人々が増えるにつれて、近年は再び注目を集めています。

 
藍染めでお馴染みなタデアイの葉や、夕日のような茜色を作り出す茜の根など、一言で「天然染料」と言っても種類は多岐に渡り、植物由来のものはもちろん、動物由来のものも少なくありません。手軽なところでは、コーヒーや紅茶、玉ねぎといった素材を使えば家庭で簡単に、自分好みの色に染めることができます。

 
純白で華やかなイメージが強いウエディングドレスは、一生に一度しか着る機会がないと考える方が多いでしょう。しかし、スカートの丈を直して染め直すなど、リメイクをすることで、ちょっとフォーマルなワンピースとして活用することができます。

 
天然染料ならではの優しく繊細な色合いは、ウエディングドレスのもつ清楚な雰囲気やふんわりとした質感にぴったりです。クローゼットを開けるたび、袖を通すたび、思い出が蘇るように。

 
世界にたったひとつの色で、自分の衣装を染めてみてはいかがでしょうか?

 

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